ISO 30414を活用した人的資本リスクの見える化 共通の土台を作ろう
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企業を取り巻く環境が大きく変化するなか、人的資本をどう育て、どう活かしていくかが経営の中心的なテーマになりつつあります。少子高齢化による人材不足、働き方の多様化、ESG投資の広がり、こうした流れの中で、企業価値の源泉が無形資産、そして「人」へと移りつつあることを、多くの企業が実感し始めています。人材に関する情報を丁寧に捉えることの重要性は、これまで以上に高まっています。
その一方で、人的資本に関する情報は部門ごとに散在しやすく、「自社はいまどの状態にあるのか」を把握しづらいという課題もあります。離職や後継者育成といったテーマは変化が徐々に進むため、兆しを見落としやすいという実務上の悩みも残ります。
こうした状況で役立つのがISO 30414です。ISO 30414は、人的資本に関する領域や指標を体系的に整理した国際標準規格で、2025年の改訂により内容が見直され、より実務で扱いやすい形にアップデートされました。複雑になりがちな人的資本の情報を「どこから見ればよいか」という視点で整理できるようにしてくれるのが特徴です。
本記事では、
- なぜISO 30414が人的資本経営と結びつくのか
- どのように課題や方向性を整理できるのか
- どんなリスクの“兆し”に気づきやすくなるのか
の3つのポイントから、ISO 30414の実務的な使い方を紹介します。
ISO 30414と人的資本経営のつながり
近年、企業を取り巻く環境は大きく変わってきました。
少子高齢化による人材不足、働き方の多様化、ESG投資の広がり、そして企業価値の源泉が無形資産へと移りつつある今、「人をどう育て、どう活かすか」がこれまで以上に経営の中心になっています。
その一方で、人的資本に関するデータがきれいに整理されておらず、組織として“いまどこにいるのか”がつかみにくい場面もよくあります。離職の兆しや後継者育成の進み具合など、将来に関わる重要な変化が見えにくくなってしまうのです。
こうしたときに役立つのがISO 30414です。ISO 30414は、人的資本に関する領域や指標を体系的に整理した国際標準規格で、「どの視点から情報を整えていくと全体が見えやすくなるか」を教えてくれます。
人的資本を企業価値の源泉としてとらえるうえで、ISO 30414は「まず何を見るべきか」を整理するための地図のような存在です。複雑に見えやすい人的資本のテーマを、落ち着いて把握できるようにしてくれる“共通の土台”として活用できます。
ISO 30414を用いて人的資本の課題と方向性をつかむ
ISO 30414は、人的資本に関する11の領域を体系的に整理した国際標準規格で、企業が人的資本の情報を整える際に“どこから見ていけばいいのか”を示してくれるコンパスのようなものと言えます 。
2025年に公開された改訂版(ISO 30414:2025)では、指標の整理や構成の見直しが進み、実務で扱いやすい形にアップデートされました。2025年の改訂版により、人的資本を把握する際に押さえておきたい視点がより明確になり、情報整理の基準もそろえやすくなっています。
ISO 30414が示す領域ごとの視点を使ってデータをそろえていくと、「どこはきちんと手当されているのか」「どこに抜けや偏りがあるのか」といった、人的資本の“ばらつき”が自然に見えてきます。
採用、育成、後継者計画、エンゲージメント、安全衛生など、テーマごとに“強いところや弱いところ”が見えるようになるため、課題の整理がしやすくなります。
情報が整理されてくると、組織内での認識のズレも減り、「次にどこを強化すべきか」「今の状態から何を変えていくべきか」という方向性が自然と浮かび上がってきます。
人的資本の議論はどうしても抽象的になりやすいのですが、ISO 30414を使うことで“話し合う土台”がそろい、改善の起点をつくることができます。
また、開示に向けてデータを整理していくプロセス自体が、自社の人的資本の現在地を理解する入り口にもなります。「今のままで良いのか」「どこから改善を始めるべきか」といった議論が進めやすくなり、組織としての方向性も固まりやすくなります。
ISO 30414で把握できる人的資本リスク
ISO 30414は、人的資本に関する情報を整理するための国際標準規格であり、企業の人的資本リスクを直接測定するものではありません。
ただ、指標に沿って情報をそろえていくことで、組織の中に潜む人的資本リスクの“兆し”を早めに見つけやすくなる点に、実務的な価値があります。
特に、離職、後継者育成の遅れ、エンゲージメントの低下といった領域は、企業の持続的な成長に影響しやすいテーマです。このような領域は大きな変化として一気に表れないことも多いため、「早めに兆しをつかめるかどうか」が重要になります。
たとえば、離職率や初年度離職、平均勤続年数といった基本指標は、人材がどれくらい定着しているのか、どこに流出の傾向があるのかといった組織の安定性を読み取る手がかりになります。
また、後継者計画やスキル・研修に関する情報が整理されていると、「将来この役割を担える人がどれくらいいるのか」「必要なスキルを身につける仕組みが回っているか」といった“次の世代を育てる力”も見えやすくなります。これは事業継続性を考えるうえで経営にとって欠かせない視点ですし、未来へ投資する投資家にとっても重要な情報です。
エンゲージメントや健康・安全に関する項目も、働きやすさや職場環境の変化をつかむうえで重要です。数値が急に悪化しなくても、小さな変化が続いている場合には、組織の疲れや認識ギャップが生まれている可能性があります。こうした領域は“見逃しやすい”ため、体系的な把握が役立ちます。
さらに、人的資本に関する情報の開示が不十分だと、企業の透明性に対する評価が下がり、投資家や外部ステークホルダーとの信頼に影響する可能性もあります。つまり、“データがないこと自体がリスクになる”という状況もあり得ます。
ISO 30414は、こうした外部からの期待に応えるうえで、「どの項目を整理しておくべきか」を示してくれる役割も担っています。
指標自体が人的資本リスクを判定するわけではありませんが、必要な情報が体系的にまとまっていることで、兆しを早めに捉え、適切な対応につなげやすくなります。
結果として、ISO 30414は人的資本リスクの見逃しを防ぐ“土台”となり、組織が健全に成長していくための支えになります。
まとめ
「ISO 30414を活用した人的資本リスクの見える化 共通の土台を作ろう」と題して、ご紹介してまいりました。ISO 30414は、企業が人的資本の状況を正しく把握するための基本的な視点を提供してくれる国際標準規格です。
指標に沿ってデータを整えることで、人的資本の現在地が見えやすくなり、離職や後継者育成の遅れといった人的資本リスクの兆しにも気づきやすくなります。人的資本情報の開示は、外部への説明責任だけでなく、社内の認識合わせや改善に向けた議論のきっかけにもつながります。
ただし、実際に人的資本リスクの兆しをどう整理し、実務に落とし込んでいくかは、企業の規模や体制によって難易度が大きく変わります。こうした課題に向き合うために、電通総研では人的資本リスクをより立体的に捉える可視化ツール「羅人盤」を用意しています。
羅人盤はISO 30414の項目をベースにしているため、国際基準に沿って情報を整理・評価しやすく、組織の“現状”を俯瞰する手助けとなります。
まずはISO 30414を使って必要な情報を整理し、必要に応じて羅人盤のようなツールも併用することで、小さな部分からでも可視化が前に進みます。その積み重ねが、人的資本経営をより深めるための確かな一歩になります。
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